【漫画家コラム】34歳からマンガを描き始めて4年目に思うこと in沖縄
こんにちはモソ(中の人38歳)です。
このたび、マンガSeekというサイトに登録されていました。
最初に登録してくれた方(もりざるさん)、ありがとうございます。
https://mangaseek.net/person/19506.html
内容を加筆修正させていただいたところ・・・一人だけ結果肩書きがとんでもないことに(笑)
しかしながら、名だたる漫画家の先生方に並んで名前が載るのは、感無量であります。
さて、8/13(月)に中学生向け漫画教室の講師をさせていただくことになりました。
ふとここで、約4年マンガを描き続けたオッサンが思ったことを書き溜めたいと思います。
漫画を描きたいと思っている人には、おそらく参考になることも多いのではないかなと願いつつ。
(1)描いて完成させること絶対条件
当たり前ですが、漫画は描かないことには始まりません。
面白いことに「漫画家になりたい」「絵で飯を食いたい」といいながら、描きもしない人って一定程度いるんですよね…。
普通に考えて無理だと思いますよね。無理です。
また、漫画原稿として仕上げきれていない人も一定程度います。
非常にもったいない。
原稿を仕上げるという定義は「印刷やデジタル配信において読みやすい状況」ということにあると思います。
印刷に関しては、これまでの技術的な都合上、最低限「ペン入れ」をしないといけませんでした。
ベタ塗り(黒く塗りつぶす)や、陰影を付ける「トーン」を貼る作業を行なって原稿が完成となります。
今はデジタル漫画も普及しており、インターネット上も重要な表現の場となっています。
以前のように誌面のみが表現の場ではなくなりました。
デジタル漫画が普及して、誰でもマンガを執筆して表に出せる時代になったのです。
印刷物では不向きだった鉛筆画でも、面白ければ十分に話題になります。
そういう時代ですから「読者が読んで楽しめる」ところを目標に仕上げて、完成させることが大事と思います。
(2)”完璧を目指さない”強み
私は実はさほど漫画も読みません。
世帯持ちの弱小経営者になり、さらに漫画を描く側になってからは、漫画を読む時間もありませんからね・・・。
なので絵はそこそこで表現もイマイチという自覚はあります。
しかし、あまり漫画を読まないことがプラスに働いたこともあります。
「完璧を目指さず、できる範囲でいいから描こう」というスタンスで描き続けていることです。
これを繰り返しているうちに、単行本を自力で2冊出すまでになり、おかげさまで漫画家のデータベースに掲載いただけています。
正直言うと我流のやり方なので、私は他の漫画家の先生方に並ぶのも恥ずかしいし、本気で漫画家を目指している人に申し訳なかったので、私は「漫画家ではない」と言い張っていました。
単行本を出しておきならが漫画家ではないとはむしろ失礼ではという指摘もあり、現在に至ります(ごもっともです・・・)
私の場合は「完璧を目指さない」からこそ描き続けられています。
何でも完璧にやろうとすると疲れますから、できる範囲で完成させればよいのです。
「漫画家になりたい」「絵で飯を食いたい」でも描かないという人の行動パターンを見ると、あまりにも漫画や絵(を見るの)が好きな人達という印象を受けます。
漫画を描こうとしても、思い通りにならなくてすぐに挫折してしまうわけですね…。それはあまりよくないです。
完璧を目指さない=いい加減という意味ではありません。
その時にできる範囲でやれば良いのでは、という話です。
(3)作品1つにつき、1つ課題を作る
我々アマチュアが焦って、プロの先生方と比較して「あの技術も必要、この技術も必要」と躍起になる必要はないと思います。
とはいえ、絵でご飯を食べさせてもらう商売ですので、より良い作品を提供しないといけないと普通は考えます。
絵なんてすぐに上手くなるものではありません。長い時間を要するのは誰でもわかるはずです。
漫画を描き続けることができれば、普通は何かしら上達するもんです。
ただし、「工夫する」という前提の話ですけどね。
私の場合ですが、1話(20ページ前後)描くごとに、1つの課題を課しています。
たとえば
・手をもっとしっかり描こう
・キャラクターの表情をもっとしっかりしてみよう
・動きある絵にしてみよう
とかですね。
できているかどうかは別として、毎度ちょっとした課題を課して工夫をすることで、徐々にではありますが技術が上がっている実感はあります。
技術はあとからついてきますから、あせらず1つづつクリアしていきましょう。
そんな悠長な時間がないという人は、悩んでいる暇があれば描きまくればいいのです。
(4)画力以外も鍛えること。むしろ重要。
漫画家を目指すなら画力や表現力が高ければ高いほど良いのでしょうが、それだけでは漫画は描けません。
絵が上手くても、セリフや心情のキャッチボールが出来ていない漫画って、違和感というかストレスを感じたりしませんか?
物語を作ったり、ネタを探したり…漫画執筆は、やることがとても多いのです。
幸いなことに私の場合は、ネタが豊富でした。
私が漫画を本格的に描こうと思うまでに、就職、結婚、子供が生まれて脱サラし、現在に至っています。
趣味人なので趣味も趣味もいっぱい。雑誌ライターやラジオ番組のプロデューサーなどもやりました。
変な友達もいますし、自分自身も変という自覚があります。
そのおかげで情報や引き出しは沢山あります。
この経験をもとに漫画を描けているのです。
漫画を描きたい人は、最低限友達を増やして喋るようにすると良いと思います。
かく言う私はトークショーや講演などもさせていただいていますが、実はコミュニケーションが得意なほうではありません。
しかし、幸いにして人と話することは楽しいです。
これを解消するために、あえてラジオ番組を企画したり、人前で喋ることをどんどんやっているから、できるのです。
なんにせよトレーニングが大事です。
人と話すことが苦痛という漫画家志望の方は、人間観察をしましょう。
(5)否定的な意見は必ず出るから気にしない
プロの先生方でも一定程度否定的な意見があったり、アンチがいたりします。
反応に一喜一憂してても、精神衛生上悪いだけで特に意味がないです。
この手の人を分析すると
・漫画が好き過ぎて評論家気分になっている人
・漫画家になりたかったが夢が破れた人
・何でも指摘したいマン
みたいな感じで、建設的な意見がなかったりします。
沖縄では夏の甲子園が盛り上がりますが、テレビの前で「だから俺の言うこと聞けと言ったのに」と、興奮気味に語るおじさんがいます。そこまで言うならば打席に立ってみろという話ですし、漫画に関しても同じです。
描いてるヤツが一番偉いです。なので、否定的な意見はあまり気にしないことです。
ちなみに、私の友人に新聞でコラムを連載している漫画評論家の先生がいますが、良し悪しをバランスよく理路整然と論評されています。評論することと個人の主観や要望は似て非なるものです。
もちろん、ある程度お金をもらっていますし、時間を裂いていただいているわけですから、改良できることは、ある程度意見を取り入れるほうがよいではあります。
ただし、無理のない範囲で。
ちなみにアンチ的な意見が怖いので作品を出せないという人もいるかもしれませんが、残念ながら「漫画で飯を食いたい」という夢はあきらめたほうがいいです。多少のアンチは気っても切り離せない商売ですから…。これはどうしようもない事なので、そのまま受け入れ(受け流し)するようにしましょう。
気にしない、気にしない。
(6)プロの意見を貰うということ
描き続けてると、第一線で活躍するプロのクリエイターさん(自称ではない)と接触する機会も増えます。
プロのクリエイターさんから否定的が出てきたらどうでしょう。
そんなときは凹むどころか、喜ぶべきことなのだと私は思います。
プロで活躍しているということは商売(商業)です。
漫画の表現の場というのは無尽蔵になりましたが、仕事にできて収益を上げられる漫画家はごく一部の狭き門。
新参者に追われ、蹴落とされることは避けたいでしょう。
自らの技術を磨きつつ、他者には早いうちに諦めさせて、競合相手を減らすほうが得ですから。
プロの先生方から否定的な意見が出ることは、「脅威に感じられているかもしれない」と肯定的にとらえて、次回作のエネルギー源すれば良いのです。
一方で、第一線で活躍されている先生方から褒められると、心の底から嬉しいものです。
私も第一線で活躍している先生方から、「ネタも豊富だし、今度私が描いている雑誌の編集部を紹介しようか?」とか「絵のことは言うほど悪くないから心配するな。こういう所を注意して、今の調子で描き続けて。」と応援されたこともあります。
プラスの評価と助言をエネルギーに、さらに前進する所存です。
なお、書き続けて形にしているからこそ、プロの先生方に評価いただけるのであって、描きもせずに評価を貰おうとか、助言を貰おう(イチから教えてもらおう)などというのは失礼な話です。
描いているからこそ得られる貴重な助言なのです。
(6)便利なものは何でも使おう
私はデジタルに触れてから、本格的に漫画を描き始めました。
若い頃から漫画を描いている方はアナログ(手書き)から始めた方も多いでしょう。
アナログで描く技術はすごいと思いますし、私は到底真似ができません。
とはいえ「最初はアナログからやるべき」などの形式ばった考え方は、あまりよろしくないと思います。
便利ならデジタルに早く慣れたほうがいいし、アナログのほうがスムーズにできるのであればアナログでやればいいだけです。
たとえば漫画のアシスタントも、今はスカイプで調整しながらネット上でデータをやりとりする時代ですから。
以前のように上京しないとできない仕事ではなくなりました。
アナログの利点は、アナログならではの職人的な味があることと、原画展ができることくらいしか思いつきません。
便利さではデジタルが圧倒的だと思います。
また、アナログ原稿もデジタルで編集されて、印刷機にかけられます。
デジタル画材を取り揃えるのが金銭的に厳しいという方はアナログで描くしかありませんが、デジタル画材を持っているのに活用しないのは非常に勿体無いです。
私は早くデジタルに慣れるほうが絶対的に有利だと思います。
アナログでしかできないところはアナログで、それ以外のところはデジタルででも構いません。
早く完成させるには何が便利なのかを考えることが大事と思います。
トレース(トレス)はダメだとう人もいますが、工業高校出身で製図工的な仕事の経験もある私にとっては、トレースは一つの技術です。トレース検定というのもありましたからね。
近年の漫画は製図なみの精度を求める傾向がありますので、なおさらトレース技術は必要でしょう。
ただし、空想の世界を描かないといけない場合、トレースに慣れすぎてもよくないので、ほどほどにという感じです。
ちなみにデジタルで便利なのは「戻る」が使えることと、「レイヤー」でそれぞれの層を作って作画できること。それ以外にも山ほどあります。
デジタルは「戻る」「レイヤー」などが使える
便利なものは何でも使いましょう。
はっきり言ってしまうと、できもしない事にこだわりを持つほど、無駄なことはないと思います。
こだわりで前に進まないくらいなら、完成させる工夫をするほうがよほど大事なのだと思います。
(7)読みやすさを追求する
物語の良し悪しや画力は漫画では大事なことですが、まず第一に考えないといけないのは「読みやすさ」だと思います。
読者さんには大きくわけると「話しが面白ければ絵は多少気にしない」人と「絵が気に入らないと読む気が起きない」タイプがいます。後者は漫画好きや漫画家志望(元含む)に多い感じです。
いずれにせよ「読みにくい」作品はストレスが溜まるものです。
具体的にどのような作品が読みにくい(ストレスが溜まる)のか。
・セリフのキャッチボールができていない。
・ちょっと考えないと意味がわからない(良い意味では文学的?)。
・漫画の流れ(上から下、右から左)に乗っていない。
・本の内側(ノド)にセリフが埋もれてしまっている。
・字数がやたらと多い
・字が小さい、汚い
などです。
私の場合は字数が多い&字も汚いパターンなのですが(汗)、ライター出身なので何度もセリフ回しを見直しして、読みやすさを追求するように工夫をしています。おかげさまで「情報がすんなり入り、とても読みやすい」という意見を貰うこともあります。
一方で、字数が多い人のが苦手な人(絵から入る人)には無理という作品となっています。
私の漫画は釣りの実用書を兼ねているので、あえて字数を多くしつつ、そのかわり読みやすいセリフまわしや流れになるよう、何度も手直ししているわけです。
また、現在はデジタル漫画も普及していますが、端末の半数以上はスマートフォンからです。
都合よくタブレットPCやデスクトップPCで見てくれているわけではありません。
電子書籍によっては拡大縮小や特定のコマを拡大する機能があったりしますが、この作業も結構なストレスになったりします。
なので字(フォント)の大きさは以外にも重要な要素だと思います。
スマホで読みやすいことを意識するのは、これからの漫画では意外と重要なことかもしれません。
(8)ネームの段階で何度も手直しする
これもコラムで再三書いておりますが、ネームはあくまでも調整資料ですので、何度も見直しします。
早くペン入れをしたいからとここで手を抜くと、読みやすさなどの追求の面から、残念な作品になりがちです。
ペン入れや仕上げはかなりの労力が必要です。
どうせ労力をかけるならネーム段階で何度も練りましょう。
また、ネーム段階で綺麗に絵を仕上げる人が多いですが、あくまでも物語の流れや構成をチェックして手直しするための資料なので、描き込む必要はないかと思います。絵はデッサン人形みたいな雑なもので構いませんし、セルフチェック用なら字が汚くても構いません。
2018年7月 中の人
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