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【出版】ISBNや書籍JAN、国会図書館への納本の話

(公開: 2018年03月26日)
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こんにちはモソです。

本日は「ラッキーキャッツルアーフィッシングスクール」発行にあたってのさまざまな手続きの話を簡単にまとめてみようと思います。同人誌をかじった人なら「ISBN」「国会図書館への納本」など聞いたことがあるかもしれません。その具体的な話を描いてみます。

【同人誌と自費出版】

基本的にどの出版物も「好きだから書いている」がベースになっていると思いますが、同人誌は一般流通を考えていない(または一般流通できない)出版物と考えると良いかもしれません。たとえば既存作品をベースに描いた二次創作については”同人誌即売会”ではグレーとされていますが、一般的な書店で扱うと著作権侵害になってしまうケースがほとんどです。なので一般流通することはありません。

一般創作と呼ばれるオリジナル作品であり、公序良俗に反しないなど一定程度の問題がクリアできていれば、書店などに流通させることも可能です。

この場合、

・出版社に企画を認められ、出版社の費用で発行してもらう。

・「どうしても発行したいから」と、印刷製本費用や編集代金を出版社に支払い流通させる「自費出版」

・自力でミニ出版社を立ち上げて流通させる方法

があります。

自費出版は「売れようが売れまいが好きな本を描きたい」という点では同人誌ですが、編集代や出版社の経費・利益が計上されるので、目玉が飛び出るような費用がかかります。しかしながら一定程度の流通までやってもらえます。

しまこみの場合、「自力で流通させる」方法を選びました。漫画家としての活動だけではなく、ミニ出版社としての能力を有することとなったのです。茨の道です…

【出版社になるには】

出版社を立ち上げるのは非常に簡単です。

まず、事業者形態として「法人」「個人事業」にわかれますが、個人事業は何らかの資格を有するものではない限り、税務署へ「事業届」を出せば事業(個人事業主)がスタートできます。

出版業としては医療や不動産取引のように、資格が必要なものではありませんので、事業届1枚でスタートできてしまうのです。

カンタンでしょ?

事業届を出すということは確定申告が必要になります。

この手続きは非常にわずらわしいです。

でも事業を行う以上、また、利益が見込める事業である以上は避けて通れない事務作業となります。

事業届を出すと税務署から「記帳指導を受けますか?」と案内されます。希望すると税理士さんが派遣され基礎的なことを教えてくれますので、是非とも受けたほうが良いです。

記帳指導では取引量が多い場合、ソフトを買ったほうがいいこと(私はやよいの青色申告:1万円くらい)、必要な帳簿の入力方法などを教えてくれます。取引量(売り買い)が少なければ手書きの帳簿でもいいです。

ちなみに確定申告にはフォーマットに基づいた「青色申告」とフォーマットに基づかない「白色申告」がありますが、青色申告では税金がだいぶ安くなります(65万円控除)。

また、白色申告でも記帳義務ができたので、難しいですが青色申告を行ったほうが色々お徳です。

「青色申告会」という組織があり、年会費1万2千円(沖縄の場合)で色々教えてくれるので、入会するのも手です。ただし3万円くらいのソフトを買えと言われます(笑)私は毎度やよいで出していますが・・・

しまこみの場合は本業の傍ら、出版事業も行う感じですので、このあたりはいつもと変わらずという感じになりました。

変わったものと言えば「画材」「ペンタブ」「資料に使える漫画」「打ち合わせの食事代」などは、きちんと理由が説明できるならば経費扱いとなる点です。

経費というのは収入(売り上げ高)から差し引ける費用で、経費を差し引いた金額に税率が加算されます。もちろん単なる趣味で購入したものはダメですけどね(そのあたりは税理士さんと相談してください)

予断ですが、同人誌即売会で利益が上がっているサークルが税務署に目をつけらている・・・なんて話を良く聴きますが、利益が上がっているか否かの判断は、帳簿や根拠資料(領収証や通帳など)しかありません。「うちは儲かってないから確定申告も届け出もなしで大丈夫」と思ってるところは、せめて帳簿だけでも付けていたほうがいいと思いますよ。

たとえば同人誌の仕入れ、交通費、サークル参加費用、画材代などの領収証、その日や通販の売上高などを整理して、いくらくらい利益が上がっているのかを把握していたほうが良いと思われます。

まあ同人誌即売会は「頒布」しているので利益は上がっていない、ということになっていると思うのですが(笑)

【出版社の箱は出来たが】

問題は出版社が出来てからです。

同人誌を製作している方で印刷物発行の経験があれば、本を執筆・発注することは可能でしょう。

しかしながら・・・

・書店に本を置いてもらう

・置いてもらうだけでは売れない

・どうやってPRするか

はめちゃくちゃ難しいです。

特に「どうやってPRするか」は難しいですね。営業や経営のセンスが問われます。

最近だと、ツイッターやPIXIVなどで人気を得ている作家さんなら、それなりに発信力を持っていますから、その点は強いと思います。そういうのがない人は、PR方法を工夫しなくてはなりません。

しまこみがサイトを運営しているのも、このような記事を執筆しているのも、作品のPRの側面が強いです。

執筆だけではなく、販売方法を考えなくてはなりませんから、自力で出版社を立ち上げる労力というのは、やはり大変なものです。

あと、最近は編集者不要論がツイッターなどでも話題に上がっています。

個人的な考えではありますが、「書店や取次店への営業」「作品のPR」などの作業は編集部や出版社の仕事であり、漫画家さんや作家の仕事ではないと思っています。

作品と自分の手柄しか見ることができず、上記の要素がまるでダメなところは編集部や出版社としての能力を疑ったほうがいいですね。

【流通させるためにもISBN/書籍JANを】

本や漫画好きな人なら、書籍に2段または1段のバーコードがついているのを見たことがあるでしょう。

2弾バーコードの上は「ISBNコード」と呼ばれる世界中で通用する書籍用のコードです。

簡単に言うと本の戸籍で、「ラッキーキャッツルアーフィッシングスクール①」の場合「978-4-9910057-0」となっています。

最初の「978-4」は日本を示し、「9910057」が出版社記号、「0」は0~9までの本の連番、最後の番号は検算(バーコードのエラーチェック用で計算式がある)になります。

ISBNコードは「日本図書コード管理センター」で取得可能で、よほど不備がない限り(21600円/10件)または(32400円/100件)で申請できます。

申請から登録までには3週間ほどの期間がかかります。

ISBNコードのメリットとしては、書店や取次店はこのコードを調べることで円滑に書籍は発行元を検索・発注できることです。

たとえばラッキーキャッツを書店で注文する場合は、「ラッキーキャッツルアーフィッシングスクール①(9910057-0)」を伝えれば書店や配本業者が円滑に調べて注文することができます。

また、9910057が出版社記号なので、出版社の連絡先を検索できます。

(追記)この記事を執筆した翌日、沖縄県内の大手書店様よりラッキーキャッツルアーフィッシングスクールに関する問い合わせが入りました。こうして電話がかかってくるのも、ISBNコード(出版社記号)があるため円滑に行えたものと推察されます。

【ISBNと書籍JANとの違いは】

一方で書籍JANの登録というものもあります。

書籍JANは「(財)流通システム開発センター」で申請でき、取得したISBNコード(10件or100件)に対し、3年間書籍JANコードを使用する権利となります。出版社を立ち上げた直後に発生するコストは10800円/3年で、出版社の売り上げによって金額が変動します。大手出版社は結構な費用になりますね。

書店での流通を考えているならば、ISBNと書籍JANは同時に申請していたほうが良いと思います。

書籍JANを取得するメリットは、書店のバーコードリーダーが活用できるので、書店員さんが楽になるということです。

書店員さんが楽になるだけなら別に要らないのではという意見もありますが、取り扱いがしやすいということは、書店側でも押しやすくなる(かもしれない)というメリットがあるのです。

逆に言うと、よほど話題がある本でない限り、ISBN/書籍JANのない本は、取り扱いがわずらわしい商材となってしまいます。

また、出版社側が「どの売り場でいくらで販売して欲しいか」というのも、このコードを見れば一目瞭然となります。

たとえばラッキーキャッツの場合「192-0975-01000-4」ですが、「192」は共通、「0975」は「一般-コミック-体育・スポーツ」になります。75の「体育・スポーツ」は釣りも含まれますので、釣りの本関係においてほしいという要望が書店側に伝わります。01000は1000円(税別)、最後は検算用の数字です。

一般的な漫画は「0979(一般-コミックス-コミックス・劇画)」または「9979(雑誌扱い-コミックス-コミックス・劇画)」

が用いられています。

つまり、ラッキーキャッツは漫画コーナーを想定していないということが書店に伝わりますね。

(大手出版社の作品群に埋もれてしまうのは目に見えてますからね・・・)

また、JANコードとごっちゃになりやすい用語に「POS(システム)」がありますが、これは会社(書店や取次店)ごとに商品を登録管理するコンピュータシステムのことです。

書籍JANや書名などの情報を各社POSに登録することで、発注から売れ筋管理などを一元化することができますから、書店側のメリットは大きく、また、販売促進を行うためには書籍JANは必須だと思います。

【バーコードを発注する】

ISBN/書籍JANの権利を有しているだけでは流通できません。

バーコードには規格があり、また、書店側のチェッカーでしっかり読み取りされる必要があります。

バーコードを無料生成するアプリもありますが、私は専門の業者に発注しました(2500円/1件)

高いと思うかもしれませんが、エラーで読み込めないとなると、書籍JANを取得した意味がなくなりますから、そこはケチらず行いました。

読み込みさせる性質上、データはベクターデータ(.epsなど)となり、「イラストレーター(イラレ)」などのソフトじゃないと加工ができません。

カバー作成についてはイラストレーターが使える友人にお願いしました。

【取次店との調整】

印刷物は直接書店とやりとりする方法と、取次店(配本業者)さんにお願いして配本してもらう方法があります。

発行部数が少ないと取次店さんが嫌がったりたりするので、書店と交渉する方法がいい場合もあります。

しかし配本や事務処理が煩雑となってしまいます。

執筆と兼務している場合は、配本や事務処理に時間をとられて、肝心な執筆ができなくなるので、あらかじめ取次店さんにあたって、企画の内容や予定発行部数、価格など提示・交渉すると良いでしょう。

ちなみに私の場合、取次店様の都合で右往左往ありましたが、取次店様にて流通してもらえる見込みとなりました。

(追記)友人のつてで取次店様と打ち合わせができ、取次店様経由で配本できる見込みになりました。年度末ということで教科書や業務用書籍の煩雑期にあたってしまい、納本が遅れる見込みです。繁忙期などをとらえて出版時期を決めたほうがよさそうです。

なお、反応は良好で、「あなた色々知ってて面白いね。勉強になったさ」と言われました(笑)。営業や販売戦略・・・たとえばどのような客層を想定していて、どの導線に商材を置くかなど、ある程度計画を提示。取次店様の経験などを含めて調整するなどすると反応が良いと思います。

【国立国会図書館への納本】

国立国会図書館法(昭和23年 法律第5号)の規定により、国会図書館へ納本が必要(義務)となります。

1部でOKとのことですが、2部納本すると関西分館へも納本されます。

ちなみに、事前に申請しておくと「納入出版物代償金」という補助が受けられます。

手続きがめんどくさい私は、受領書のみお願いしました。

国会図書館に納本され、受領書を発行されるってそれだけでかっこよくないですか?(笑)

【意外とめんどくさいけど簡単】

色々ゴチャゴチャと書いてみましたが、帳簿付けや確定申告はどの事業を行ううえでも必須になります。

雑貨屋さんや猫カフェでも避けて通れない道です。

それ以外は1度経験してしまえば、さほど難しいことではないと思います。

悩むよりもやってみましょう。

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