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【コラム】沖縄から本を出す方法を考察する

(公開: 2020年09月17日)
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こんにちは。モソです。

今手掛けている出版物(ルアー釣りの本)の原稿がほぼ完成する見込みですが、その販売ルートについて検討課題が出て来たので、それぞれをまとめてみることにしました。

【販売戦略を検討すると】

過去記事で書いているとおりですが、地元漫画家とコラボ漫画(私は原作とアシスタントを担当)を執筆し、本土の出版社に売り込みをする計画だったのですが、昨今のコロナ渦で持ち込みも厳しくなり、一番期待していたコミティア「出張編集部」にも行けない状況となってしまいました。

そこで漫画賞などにもチャレンジしてみるわけですが、1話ではなかなか伝わりにくい。

あと、ぶっちゃけ年齢の不利もあるような気がするんですよね。

経験豊かなオッサンよりも、若い人でまだまだ伸びそうな人のほうがお金になるという悲しい現実が…。そんな事で悩んでても仕方ない。常に前向きに(笑)

ただ、オッサンもだてに歳とっているわけじゃないです。経験値がダンチなんですよマジで。

これは漫画執筆のことではなく、人生経験的なものですね。特に筆者モソは、普通の人が経験しない事にチャレンジしまくってますので、ネタは豊富なのです。ネタは確実に武器ですよね。調理法が問題なわけで。

相棒からは「3話分くらい書いて持ち込んでみては」という堅実な話も出てはいるのですが、個人的にはそれも含めて「”パッケージ”で売り込みしたい。」というのがあります。

パッケージとは1話の完成原稿、続きの2話のネーム、当面の販売戦略(単行本の売り込みからアニメ化作戦、関連サービス、その資金調達まで)、そして我々の戦略や能力の裏付けとなる根拠資料。プレゼン用のパワポはいつでも出せるように更新(笑)

この根拠資料として、現在執筆中の「図解でわかる沖縄のルアー釣り 陸っぱり編」を使用するわけですよ。

【編集者は忙しい、という事を踏まえる】

最近地道に行っている作画配信で友達になったプロのイラストレーターさんからありがたい情報をいただきました。

「編集者はむちゃくちゃ忙しい。」

このイラストレーターさんも釣りが好きで、編集者と話になることがあるらしいのですが、「昔は釣りに行ってたけど、今は忙しくて行けない」という人が多いらしいのです。

「釣り好きの編集者を探して、プレゼンする」という作戦だったのですが、これはうまくいかない可能性が出てきました。とはいえ、釣りに行った気分にさせる作品を目指す、という考え方も生まれてくるわけですけどね。

編集者は忙しい。これを踏まえることで、様々な販売ルートが見えてくるわけです。

やはり、コミティアの出張編集部には行った方が良い。

マンガ作品に関しては、アポをとって出版社へ直接出向き持ち込むすることもできますが、基本的に他の業務で忙しい中で対応するので、心象が悪い場合が多いのではないかと。実際に持ち込みをしてみた雑感です。

先方も社会人なので露骨には出さないですが、にじみ出る「俺、忙しいんですけど早くしてくんない?」感みたいのがあるんですよね。なので、作品を読んで講評いただき終わり。プレゼンする時間もなく。

(プレゼンは2~3分で終わらすつもりではありますが、それさえままならない)

コミティアの出張編集部は添削会、持ち込み会に専念してお仕事をされるわけですから、話を聞いてもらいやすい(可能性が高い)わけですよ。

とはいえ、これを発動するのはコロナ渦が落ち着いてから。沖縄は非常事態宣言を出すほどに流行った場所ですから、今、沖縄から渡航するのは心象が悪い。

なお、口ベタな人は漫画賞を狙うとよいと思います。うちの場合は、脈があれば総合的なプレゼンを行い、連載を獲得する作戦なので。絵は相棒に任せて、自分は裏付けを頑張ります。これがオッサンなりの戦い方じゃ(笑)

【商業出版で箔を付けたい】

このように筆者モソは、「思いついたら形にする」行動力では他者に負ける気がしませんが、ブランド力がありません。

15年くらい前の沖縄アングラーの中には知っている人も多いかもしれませんが、あくまでもローカルのライターでしかありませんし…ブランド力を付けるには、やはり商業出版の経験が必要なのです。このハードルが越えられないからもがいているわけですね。

そこで自前の漫画(ラッキーキャッツ)よりも確実に売れそうなルアー釣りの解説本を先に描くことにしたわけです。ラッキーキャッツもあと1話+@で3巻出せそうなところなんですけどね。1、2巻出して3年近く経ってるよ・・・

ブランド力を付けるには、商業出版デビューが一番です。

そもそも、漫画ではない本を「商業出版」とすることは可能なのだろうか…。

【商業出版と自費出版、同人誌】

「ラッキーキャッツは自費出版したのか?」と聞かれることがありますが、少なくとも自費出版ではないです。商業出版でもあるし同人誌でもあるという変なポジションでもあります。

そこで、それぞれを分けて考察してみましょう。

・商業出版

商業出版は出版社側が出版に関する費用(のほぼ全額)を投資する方法です。

たとえば漫画作品ならば、原稿料、印税、アシスタントへの補助費など作家に入るお金もありますが、印刷製本費用や流通に関わる費用、プロモーション、編集者や広報担当社員への人件費などがかかります。そこに会社の経費や利益も乗ります。

作家側からすると原稿料をもらうことは当たり前のように見えますが、出版社側からすると、商売としてリスキーです。売れて儲かれば利益が上がりますが、コケれば赤字は出版社持ちになります。売れるかどうかは、売ってみないとわからない。

商業出版の実績がある人や、著名人が有利です。今だとyoutuberなどは声がかかる可能性が高いかもしれません。

しかしながら、本(小説など)に関しては、持ち込みの枠組みがありません。

前に描いてあるとおり、編集者は忙しい。さらりと読める漫画作品と違い、小説や解説書を読むには時間がかかりすぎてしまうのです。

レベルがまちまちの作家志望が持ち込むわけですからね。

なので、最初から「売れる」可能性があるもの・・・たとえば小説サイトでダントツで人気とか、ツイッターでバズりまくってるなどがない限り門前払いです。

日頃からのセルフプロモーションも頑張らないといけません。

・自費出版

自費出版は、商業出版にかかる費用を作家が支払う方法です。

出版社側は、その本が本が売れようが売れまいがリスクを負いませんので、常にウェルカムというわけです。売れれば儲かるのでラッキーという感じかもしれませんし。

通常、自費出版では100~200万円かかるとされています。装丁(表紙)や挿絵を頼んだり、手書きを入力する作業は別料金です。

出版社によっては、自費出版でも商業出版のように見せかけて売るということが可能なようです。高コストですが、ある意味「ブランドを買う費用」と考えれば安いのかもしれません。

重版かかれば、そのまま商業扱いになる可能性もあります。

・同人誌

同人誌は「個人的趣味を好きなように楽しんで作る」本のことです。

また、私のように「必要だから作る」という人もいるでしょう。

一般的には既存の漫画やアニメ、ゲームなどのキャラクターを用いた二次創作作品がイメージされますが、料理だったりニッチな趣味をまとめたものも同人誌です。

同人誌は出版社を通さずに印刷所で印刷し、同人誌即売会(コミケなどが有名。沖縄ではおでかけライブなど)で手売りします。

・バーコード付き同人誌

拙著ラッキーキャッツは、先に書いたとおり、商業出版と同人誌の二面性を持っています。

人の見方や立場によって、見解が変わります。

あくまでも出版社を通さずに個人的に作った本であり、クオリティーもアレですので、同人誌という解釈もできます。

一方で、流通に必要なISBNコード/書籍JANコード(バーコード)を有しており、書店での取り扱いや取次店などからの発注もあるため、商業という見方もできます。

かつてラッキーキャッツを「同人誌もOK」な漫画賞に持ち込んだところ、ISBNコード/書籍JANコードがあるために商業扱いとされ、断られてしまったこともありました。

なお、ISBNコードは個人でも3万円ほどで取得でき、書籍JANコードは初期費用1万円、その後3年に1度、1万円ほどの経費で取得できます。

ISBNコードを付することで、国会図書館へ所蔵することもできます。

【出版するなら内地企業か県内企業か】

本の出版については

・出版社側の企画で声がかかるのを待つ(商業の実績があるor有名人)。

・出版社に費用を支払い、自費出版する。

・同人誌にバーコードを付けて流通させる

・同人誌としてイベント等で売る。

という4つに絞られますが、出版社に頼む場合、それが沖縄県外の企業か県内の企業か、という選択肢もあります。

沖縄県外の大手出版社の自費出版は、大手書店との取引をうたっており、魅力的に感じます。もちろん、大きい書店に置いたから売れるというわけではありません。内容や話題性にもよるでしょう。

書いている本が沖縄に関するものの場合、県外に流通させる方法を出版社側に考えてもらったり、または自力で取次店や書店に営業をかける必要があります。

沖縄のことを書き、沖縄県民向けに売りたいならば、沖縄の出版社で自費出版する方法もあります。また、地元企業のほうが話を聞いてもらいやすく、企画がよければ「商業出版」扱いになることも期待できます。

ただし沖縄の出版社で出版する場合も、マイナス面がありそうです。

まずは販路について。

各書店との取引がある本土の出版社が、沖縄向けに集中して売り込みをかけることは可能ですが、沖縄から本土の書店向けに売り込むのは、なかなかハードルが高そうです。

大手書店には沖縄本のコーナーがあったり、書店で沖縄県産本フェアが開催されることもあるのです。また、わしたショップなどのアンテナショップもありますので、無理ではないのですけどね。

ただ、それで流通が十分なのかというと、少々疑問もあります。

また、沖縄の出版社は通販や電子書籍方面がちょっと弱い感じです。専属の担当者がいるわけでもなさそうですし…。

amazonなどに置く方法もあるのですが、やはり通販担当がいないと煩雑になり、意外とハードルが高い。私も通販をやっているので、その煩わしさは悩みどころではあるのですが。この点でも、本土の大手の出版社が強い印象ですね。

電子書籍の販売の勉強会に参加したり、地元出版社でラッキーキャッツの電子書籍化に携わったことがありますが…(おっと、誰か来たようだ。

あと、これは沖縄特有のことですが、政治的な話が入っている作品では「出版社側の思想にそぐわない」として自費出版を断られるケースもあるようです。今はそういう事はないと思いますけど…。

この点でも、自費出版でお金を支払うなら、電子書籍の製作販売に長けた本土の出版社に依頼し、沖縄に逆輸入する方式のほうが強いのかなという気もします。沖縄にこだわりがあれば別ですが。

沖縄の地元出版社もっと頑張れ、という意味でもあえて書かせてもらってます。沖縄の出版社が出した本ばかりを集めた通販サイトを作ったら、結構儲かるのではないだろうか?誰か作ってww

なお、amazonのkindleは、amazonのフリーソフトを使うことで比較的簡単に漫画作品を販売できます。その他サイトはEpubを出力できるソフトが必要になります。

【バーコード付き同人誌という戦略】

同人誌を作った経験があり、ある程度ソフトを使える人なら、バーコード付き同人誌を作り、自分で流通させるという方法もあります。

ラッキーキャッツもこの方式です。

サンエーパルコシティ HMV様にて。レジ近くにあります!

また、書店さんも地元出版社と同列に扱ってくれます。ISBNコードを取得した段階で出版社扱いみたいなものですから。

ただし、同人誌の場合はマーケティングや企画、校正(チェック)の手も自分で行わなくてはなりませんから、その点でも作品のクオリティーが下がりがちです。これを補う努力はしないといけないと思います。

ラッキーキャッツの画力の低さはさておき(笑)、たとえばネームの段階で、漫画仲間に添削をお願いしたりして、できるだけ読みやすい構図になるよう、何度か手直しするなどですね。

本に関しても、原稿段階で友達に読んでもらうとか、他者に校正をお願いするのは、読みやすさを追求するうえでは必要と思います。

ちなみに、「沖縄のルアー釣り」では自力での校正10回目で、ようやく赤ペンのないページが増えたという状況です。

ちなみにこのサイト(ブログ)に関しては日記なので、2回くらいしか手直ししません。なので雑な文章です。

多少のお金を払うのもありで、たとえば「ココナラ」などの人材募集サイトで、校正をしてくれる人を探すのもありでしょう。ココナラでは、装丁(表紙)のデザインなども、安く引き受けてくれる人を探せると思います。

さて、バーコード(ISBN/書籍JANコード)の取得は個人でもできると書きましたが、表紙の画像データに張り付けるには、illustratorなどの専用ソフトとその知識が必要となります。

専用業者に保有するISBN/書籍JANコードの情報を伝えると、有償で作ってもらえるので、それを規格どおりに張り付けるのです。

また、バーコードはシール方式で注文できるので、印刷段階でバーコードがなくても問題ありません。これを張り付ける作業が出ますが。

この手法で問題となるのは、取次店と発行部数です。

まず、自前で取次店と調整し、自力で納品する必要があります。

また、あまりにも発行部数が少ない本だと、取次ぎを断られる場合もあります

ちなみに沖縄県内の書店とコンビニに流通させるには、2000部前後必要となるとか(沖縄のコンビニ数は約530店舗:各2冊で1000部を超える)。

今描いてる本のボリュームなら、2000部作るのに40万円前後くらいでしょうか。自費出版に比べれば低価格です。

取次店から喜ばれるのは、ポスターとチラシ(フライヤー)です。ポスターは書店の店頭で、チラシは学校図書館向けなどの販売促進につながります。取次店も販売のために色々やってくれますが、一つの本に力を入れているわけではありません(売れている本なら別ですが)。

作家側が売る努力をすることは必要なのです。

なお、納品後、売れ行きをみながら請求を出して、翌々月に支払いされます。売上が支払いされるのはだいぶ先と、気長に見ておきましょう。

また、書店に直接納品する方法もありますが、集金作業や経理が煩雑になります。あまりにも頻繁に集金に行くとめんどくさがられるので注意が必要です。

また、県外への販売ルートは自前で通販サイトを管理するか、県外の大手出版社に営業をかけることになると思います。たとえば、大手の紀伊国屋書店は沖縄にも事業所があります。

【今後の戦略は・・・】

今回発行する「図解と写真でわかる沖縄のルアー釣り 陸っぱり編」は、少量を印刷製本し、自費出版の見積もりや漫画作品の持ち込みの裏付け資料として活用する予定です。

また、印刷物の一部は釣具店などの協力のうえで試験販売を行いたいと考えています。何日で何部売れたのかデータが取れれば、それは今後の発行部数や販売ルート開拓に影響します。

自費出版の価格も正確には見積もりによるところが大きいため、ほぼ完成状態の本の形になっているならば、かなり安く販売できる可能性もなくはないです。

(おそらく校正やデザインレイアウトの修正などが出てくるとは思いますが)

広く売ることを考えるなら、電子書籍にも強い本土の出版社で自費出版し、沖縄の取次店に営業をかけるのが一番かもしれません。

自費出版と言わなければ、商業との見分けはつきませんから、商業出版的なブランドを得ることができます。

一方でコストがかかりすぎる見込みもあるので、ラッキーキャッツのようなバーコード付き同人誌としてすべて自己完結する方法もあります。

この方法だと商業出版的なブランド力を得ることが難しくなってしまいますが、バーコードが付いている=商業ですという見方もできます。数が売れれば、自前で売り込んだ能力そのものをブランド化すればいいのですから。

おそらく、この2択で動くことになろうかと思います。パイロット版を見た出版社から、商業で出版する話が来たら別ですが。

なお、1冊あたりの取り分が大きいのは、ほとんど自前で完結するバーコード付き同人誌方式です。

取次店、販売店側の利益、印刷代や販促物などの経費を除くと、まるまる個人の儲けとなります。

どちらが良いと判断するかは、あなた次第?!

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